他人の著作物なのに、自由に使える条件とは?

著作権の利用
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こんにちは、トーコです。

さて、今回は著作権に関する情報です。

Web制作だけでなく、雑誌や広告などの印刷物や、映像・音楽制作にかかわる方なら誰でも著作権を意識しないわけにはいきません。

ただ、法律ってどこまで厳密に守るべきなのか?結局どういう解釈をすればいいのか?ちょっと迷う時もありますよね。

今回は『他者の著作物なのに、自由に使えるようになるための条件』について紹介していこうと思います。
え?そんなケースがあるの?と思うかもしれませんが、あるんです。
知っておくとちょっと気持ちが楽になるかも…ですよ。

今回も、文化庁のサイトから情報を仕入れています。

(前回も言いましたが)お上が発信してる情報なので、心強い!



著作物が自由に使えるとは?

著作権法では、ある条件が揃った場合に、著作権者等に許諾を得ることなく利用できることを定めています。(第30条~第47条の8)
これはつまり、条件を満たせば、作った人の許可なしでその著作物を使えますよ、ということ。
これはいったいどういう状況なんでしょうか?

通常、他人の著作物を利用したいなーっと思ったら、作った人(著作者等)に許諾を受ける・必要に応じて使用料をお支払いする‥という決まりがあります。


ただこれを、どんなケースでもやりなさい!というガチガチに厳しくすると、著作物の公正・円滑な利用を妨げてしまって、かえって文化の発展の邪魔になっちゃう、という趣旨だそうです。

もちろん、著作物は保護されなればいけません。
作った人が不利益にならないように、と同時に、著作物の通常の利用が妨げられないように条件が決められています。

たしかにね…。
法律が厳しすぎると、せっかくのキャラクターデザインがグッズにもTシャツにも利用されることなく、デザインされて終わり、なんてことになりかねない。
優れた著作物は利用されることで、文化の発展にもつながるんです。

文化庁のWebサイトには、この「著作物が自由に使える場合」と掲載したページがあります。ただ、すっごい情報量だったので、デザイン制作などに関係するところだけピックアップしてまとめました。

【文化庁/著作物が自由に使える場合】
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/gaiyo/chosakubutsu_jiyu.html

私的利用のための複製(第30条)

家庭内で仕事以外の目的のために使用するために,著作物を複製することができる。同様の目的であれば,翻訳,編曲,変形,翻案もできる。なお,デジタル方式の録音録画機器等を用いて著作物を複製する場合には,著作権者等に対し補償金の支払いが必要となる。…

引用元:文化庁 https://www.bunka.go.jp/

少し、分かりづらいのでやさしい日本語に翻訳します。

著作物を個人(家庭内)で楽しむ範囲だったら許可は必要ありません。
例えば、自分で楽しむために有名な漫画のキャラを書き写してみたり、有名なアーティストの楽曲をピアノでアレンジしてみたり。
これは理解できますよね。

ただし、私的利用目的でも、デジタル方式の録音録画機器等(つまり、データが劣化せず完璧に複製できる方法)を使ってコピーする場合はNG。著作権の侵害にあたります。

  • 自分以外(家庭内以外)に見せる(聴かせる)ために使ってはいけません。
  • もちろん、仕事で使ってはいけません。社内資料でもNG。
  • 上映中の映画の場合は、いくら個人で楽しむ範囲でも録画・録音は許可されていません。

『私的』はこう理解する。
自分、そして一緒に住んでる家族。以上です。



検討の過程における利用(第30条の3)

(検討の過程における利用)

第30条の3 著作権者の許諾を得て,又は第67条第1項,第68条第1項若しくは第69条の規定による裁定を受けて著作物を利用しようとする者は,これらの利用についての検討の過程(当該許諾を得,又は当該裁定を受ける過程を含む。)における利用に供することを目的とする場合には,その必要と認められる限度において,当該著作物を利用することができる。ただし,当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は,この限りでない。

引用元:文化庁 https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/utsurikomi.html

著作物を利用しようとする企画途中で、許諾を得る前に企画書に掲載するということはよくあります。
これまで、こうした行為は著作権侵害に問われる恐れがありました…が、ちゃんと著作権者の許諾を得る前提での検討段階なら、著作権侵害にはなりませんよ、という最近の見解のようです。

もうちょっと?み砕くと、使う予定で検討してる途中だったら、許可なくても使っていいよ。ってことでしょうか。

これって最終的に検討するだけで終わってしまった場合、つまり企画倒れした場合、著作権侵害になる?って心配になってしまいますが、そこも大丈夫。
その後、けっきょく企画が実現しなかった…としても、この見解は適用されていますので安心してくださいね。

著作権侵害とはならない利用行為の例

  • 漫画のキャラクターの商品化を企画するに際し,著作権者から許諾を得る以前に,社内の会議資料や企画書等にキャラクターを掲載する場合
  • 映像にBGMを入れるに際し,著作権者から許諾を得る以前に,どの楽曲を用いるかを検討するために,実際に映像にあわせて楽曲を録音する場合
  • 権利者不明の著作物に関し,裁定制度を利用するか否かを検討するに際し,社内の会議資料や企画書等に著作物を掲載する場合


検討中に、社内の資料で使うといった場合は許可なく利用することができそうです。原則、出所を明確に表示しておくことも忘れずに…。


いっぽう、この見解が適用されず、著作権の侵害となるNG例もあります。

著作権の侵害となる利用行為の例

  • 企業内において,業務の参考とするために新聞や書籍,雑誌等の著作物を複製する場合(公益社団法人日本複製権センターと契約を結んでいる場合には,その契約の範囲内で新聞等を複製することができます。)
  • あるキャラクターの利用に係る検討を行う過程で,当該キャラクターを利用した試作品を,社外の者に幅広く頒布する場合


業務の参考とするため → 検討中ではないのでNG。
そしていくら検討中とはいえ、実際に試作品作ってバラまくのはどう考えてもNGでしょうね…。

引用(第32条)

出ました、引用の条件です。

これさえ確実におさえておけば、社内資料はもちろん、Webでの公開も、印刷物への転載もできてしまうのです。

  • その著作物を引用する必然性があること(目的が不自然でないこと)
  • カッコをつけるなど、引用であることを明確にする
  • 自分の著作物と引用する著作物の主従関係を明確にする(あくまでも自分の著作物が主)
  • 出所(出典元)を明らかに表示すること
  • 引用部分を勝手に改変しない、手を加えたりしない


この5つの条件をすべて満たせば、他人の著作物だけど許可なく利用することができます。

つまり、自分のじゃなくて他人の著作物ですよ、と明確に区別して、どこから拝借したのかを、誰の著作物なのか、明示できるのが条件。
受け手に勘違いさせないことが大事。

このブログの記事でも、たびたび、他のサイトの記事を『引用』させてもらいました。
文化庁のページ、Wikipediaの記事など。


引用部分はこんなスタイルで区別しています。

引用元:サイト名/ページ名/URL


その際は上記のような「”」マークのついてる特別な枠の中に文章を収めて、引用元の名称やURLを掲載するようにしています。

雑誌の場合なら、出版社名、雑誌名、〇〇月号、ページ数とか、できるだけ詳しく掲載しておくと安心ですね。

文章(小説やWebの記事なども)、イラスト、写真、動画もこの条件で引用OKです。
引用ってとても便利だけども、1つでも守れないと著作権侵害となりますので気を付けて!

他にも、文化庁の当該記事には、色んなケースが掲載されていました。
紹介すると長くなりそうなので割愛しますが、ぜひ一度目を通しておくと役立つこともあるかも!



著作物を自由に使うための結論

  • 自分自身で楽しむためだけに限定した利用は問題なし。
  • 検討中に社内の資料で利用するのは問題なし。
  • いかなる場合でも、目的外で使ってはいけません。
  • 利用にあたっては、出所を明示しましょう。



素晴らしい著作物(芸術、デザイン、音楽、文章などなど)は広く知られて、正しく利用されるからこそ、そこからまた文化が発展するという考えが根底にあるんですね。

著作権ってなんだか息苦しいと思ってたけど、デザインをする立場にいると、他人の著作権を守りながら制作を進めていくことが多い一方で、自分の著作物も守ってもらってるんだな、ということもわかってきます。

雑誌広告デザインとして納品したら、看板になってたのを発見したとき、あぁ、こういうことかぁ…って思ったよ。


おすすめの書籍

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「著作権トラブル解決のバイブル クリエイターのための権利の本」という大串肇さんはじめ8名の著者が書かれた本です。

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参考文献

当記事に関する最新の情報は「文化庁」のサイト「著作権」をご確認ください。
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/

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